むかし、心つきて色ごのみなるをとこ、ながをかといふ所に、家つくりてをりけり。そこのとなりなりける宮はらに、こともなき女どもの、ゐなかなりければ、田からんとて、このをとこのあるを見て、「いみじのすき物のしわざや」とて、あつまりて、いりきければ、このをとこ、にげておくにかくれにければ、女、
あれにけりあはれいく世のやどなれや
すみけんひとのおとづれもせぬ
といひて、この宮に、あつまりきゐてありければ、このをとこ、
むぐらおひてあれたるやどのうれたきは
かりにもおにのすだくなりけり
とてなむいだしたりける。この女ども、「ほひろはむ」といひければ、
うちわびておちぼひろふときかませば
我も田づらにゆかましものを