伊勢物語 - 114

 むかし、仁和のみかど、せり河に行幸したまひける時、いまはさることにげなく思ひけれど、もとつきにける事なれば、おほたかのたかがひにてさぶらはせたまひける。すりかりぎぬのたもとに、かきつけける。
  おきなさび人なとがめそかり衣
   けふばかりとぞたづもなくなる
おほやけの御けしきあしかりけり。おのがよはひを思ひけれど、わかからぬ人はききおひけりとや。

伊勢物語 - 115