伊勢物語 - 018

 むかし、まな心ある女ありけり。をとこ、ちかう有りけり。女、うたよむ人なりければ、心見むとて、きくの花のうつろへるををりて、をとこのもとへやる。
  紅ににほふはいづらしらゆきの
   枝もとををにふるかとも見ゆ
をとこ、しらずよみによみける。
  紅ににほふがうへのしらぎくは
   をりける人のそでかとも見ゆ

伊勢物語 - 019