伊勢物語 - 042

 昔、をとこ、色ごのみとしるしる、女をあひいへりけり。されど、にくくはたあらざりけり。しばしばいきけれど、猶、いとうしろめたく、さりとて、いかではたえあるまじかりけり。なほはたえあらざりけるなかなりければ、ふつかみかばかり、さはることありて、えいかで、かくなむ。
  いでてこしあとだにいまだかはらじを
   たがかよひぢと今はなるらん
ものうたがはしさによめるなりけり。

伊勢物語 - 043