伊勢物語 - 099

 むかし、右近の馬場のひをりの日、むかひにたてたりけるくるまに、女のかほの、したすだれより、ほのかに見えければ、中将なりけるをとこのよみてやりける。
  見ずもあらず見もせぬ人のこひしくは
   あやなくけふやながめくらさん
返し、
  しるしらぬなにかあやなくわきていはん
   おもひのみこそしるべなりけれ
のちは、たれとしりにけり。

伊勢物語 - 100